

メスの鹿に角は生えるの?鹿の角のひみつと自然との共生を考える
「鹿」と聞いて、皆さんはどんな姿を思い浮かべますか?
きっと、立派な角を持つ牡鹿の姿が頭に浮かぶ方も多いはずです。
しかし、中には「角のあるメスの鹿を見たような気がする」と感じたことがある方もいるかもしれません。
そもそも、鹿の角はどのようなもので、どんな役割を果たしているのか分からないという方も多いでしょう。そして本当に、メスの鹿に角が生えることはあるのでしょうか?
この記事では、鹿の角にまつわる基本知識やメスの鹿の角についてといった豆知識を紹介します。ぜひ最後までお読みください。
鹿の角ってどんなもの?毎年生え変わるって本当?

鹿の角は、一見すると木の枝のようにも見えますが、実は骨の一種です。
オスの鹿によく見られるこの角は、成長とともに枝分かれし、立派な姿へと変化していきます。
ここでは、鹿の角がどのようにして生まれ、どんなサイクルで変化するのかについて解説します。
鹿の角は「生きている骨」である
鹿の角は、他の動物に見られる角とは仕組みが大きく異なります。
たとえば、牛や羊の角は一度生えると一生ものですが、鹿の角は毎年生え変わるという大きな特徴があるのです。
角が生えてくるのは春から初夏にかけて。最初は袋角(ふくろづの)と呼ばれる柔らかい状態で、ここには血管や神経が通っています。まさに「生きている骨」といっても過言ではありません。
この袋角は数か月かけて成長し、秋ごろには骨化して硬くなります。
そして冬が近づくと、役目を終えた角は自然と落ちるのです。
毎年抜け落ちる角の理由
鹿にとって角は、単なる飾りではありません。
オス同士が、縄張りや交尾の相手をめぐって争う際の「武器」として重要な役割を果たしています。
特に繁殖期には、立派な角を持つオスが優位に立つことも多く、角の大きさや形はその鹿の強さの象徴です。
しかし、繁殖期が終わると、その役割は一時的に終わります。
体力を温存するためにも、エネルギーの消費が大きい角は自然と抜け落ち、次の春には、新しい角がまた生え始めます。
この毎年生え変わるという仕組みは、鹿という動物の進化の過程で生まれてきたといえるでしょう。
メスの鹿に角は生える?
角のある鹿と聞くと、多くの人はオスの鹿を思い浮かべるでしょう。
しかし中には、「あれはメスだったのでは?」と疑問を持った経験がある方もいるかもしれません。
では実際のところ、メスの鹿に角が生えることはあるのでしょうか?
ここでは、その疑問について解説していきます。
ニホンジカのメスに角は生えない
結論から言うと、日本に生息するニホンジカのメスには角は生えません。
角は基本的にオスの鹿だけに見られる特徴で、これは繁殖や縄張り争いなど、オス特有の行動に関係しているためです。
角を使ってライバルと争ったり、自分の存在を誇示したりするのはオスの役割であり、メスにはその必要がありません。
メスのニホンジカは、見た目的にもオスに比べて小柄で、顔つきや首回りもすっきりとしています。
そのため、慣れてくると角があるかどうかだけでなく、全体のシルエットから性別を判別することも可能です。
海外には角があるメスの鹿も存在する
基本的にメスの鹿には角がありません。
しかし、世界中に生息する鹿の仲間の中には例外もあります。
たとえば、北極圏に生息するトナカイ(カリブー)は、オスだけでなくメスにも角が生えます。これは、厳しい自然環境で生き抜くための知恵のひとつとされており、雪を掘って食べ物を探したり、身を守ったりするために、メスのトナカイにも角が必要になったと考えられているのです。
メスに見えるけど、実は若いオスだったということも
「角の小さい鹿はメスの鹿」と思い込んでしまうケースもありますが、実際には、まだ角が生え始めたばかりの若いオスの鹿である可能性も考えられます。
角の発育は年齢や個体差に左右されるため、小さな突起状の角が少しだけ見えている状態では、見間違いやすいのです。
そのため、「あれ、メスなのに角がある?」と思ったときは、若いオスである可能性や、別の種であることも念頭に置いておくとよいでしょう。
鹿の角の使い道

鹿の象徴ともいえる角は、見た目の美しさや独特の質感から、これまでも多くの人々の関心を集めてきました。
近年では、インテリアアイテムとしても人気ですが、他にも昔からさまざまな形で人々の生活に取り入れられています。
ここでは、自然と抜け落ちた鹿の角がどのように使われているかを紹介します。
道具や装飾品として使用されてきた歴史
日本では、古代から道具の材料として鹿の角が使われてきました。
たとえば、縄文時代の遺跡からは、狩猟用の道具や装飾品として加工された角が見つかっています。硬くて耐久性のある素材で、彫刻や研磨もしやすいため、実用と芸術の両面で重宝されてきたのです。
これは日本に限らず、世界各地でも同様の歴史があります。
ヨーロッパの先史時代の遺跡からは、鹿角を用いたナイフの柄や針、狩猟用のフックなどが発見されており、人類は古くから鹿の角を身近な天然素材として活用してきたことがわかります。
人気のインテリアや雑貨
特に人気が高いのが、インテリア製品としての活用です。
枝分かれした自然な形状を活かし、シャンデリアやコートフック、壁掛け装飾などに加工されることが多くなっています。
天然の鹿の角には、人工素材では出せない温かみがあり、空間に自然の風合いを加えることができるのです。
また、ナイフの柄やペン軸、キーホルダー、アクセサリーなどの小物としても人気があります。ひとつとして同じ形や模様がないため、どの製品も世界に一つだけという特別感があるのも魅力のひとつです。
ペット用品としての利用
最近では、犬用のおもちゃやデンタルケアグッズとして、鹿の角が注目されています。天然素材でありながら長持ちし、噛むことで歯の健康維持にもつながるため、ナチュラル志向の飼い主の間で人気が高まっているのです。
ただし、角のままでは鋭利な部分もあるため、しっかりと加工されたものを選ぶことが大切です。
野生動物との共生から生まれるものづくり

近年、自然と共に生きる暮らし方が見直される中で、野生動物との関わりを活かしたものづくりが注目されています。
鹿の角や革といった副産物も、単なる資源ではなく、命の一部を受け取った大切な素材だと多くの職人が感じているのです。
ここでは、野生の鹿との共生と、ものづくりについて考えてみます。
鹿の増加による地域の課題
日本各地の山間部では、近年シカの個体数が増加しています。
これは、天敵の減少や温暖化などの影響が複雑に絡み合っているといわれています。
その結果、農作物や森林への被害が拡大し、地域の生活や自然環境に影響を及ぼすようになりました。
こうした状況を受けて、各地ではシカの適正管理が行われています。
捕獲された鹿の命を大切に活用することで、資源の循環と地域経済の再生を両立させようという取り組みが広がっているのです。
命を無駄にしないものづくり
「駆除=処分」という考え方から、「駆除=資源としての活用」へと変化しています。こうした価値観の変化の中で、鹿の角や革を使った製品づくりが盛んになっています。
単なる材料としてではなく、「この鹿はどこで生きていたのか」「どのような背景で使われたのか」といったストーリーを感じられるものづくりが、多くの人の心を動かしているのです。
たとえば、シャンデリアやランプシェードは、角そのものの美しさを活かしたダイナミックな作品で、鹿の迫力をそのまま感じることができます。
また、小物やアクセサリーは、常に身につけることができるアイテムです。
まとめ
鹿の角は、単なる動物の特徴ではなく、自然の営みそのものを映す存在です。
毎年生え変わるという不思議なサイクルや、オス・メスで異なる生態。さらに、古くから人々の生活や文化と深く関わってきた背景を知ることで、私たちの暮らしと自然とのつながりをあらためて感じることができます。
すべての命には意味があり、役割があるという視点で素材と向き合うと、そこには大量生産・大量消費では得られない深い価値が生まれます。
DEER HORN SMITH’Sでは、アイテム一つひとつに鹿と職人の魂を込めています。
そこには1頭の鹿が生きていた証があり、その命を無駄にせず受け取ろうとする人の想いが宿っている。DEER HORN SMITH’Sのアイテムにふれながら、そんな「自然との対話」を始めてみるのもよいのではないでしょうか。